「SHOGUN」18冠獲得から見える時代劇の未来

 

 

 

 

 

先日、真田広之さんが主演・プロデュースしたドラマ「SHOGUN 将軍」がエミー賞で史上最多となる18冠を達成したニュースを取り上げました。その際、真田さんが日本語で「時代劇が海を、国境を越えた」とスピーチした場面が印象的でした。彼の言葉には、現代の日本で時代劇があまり制作されていない現状への憂いが込められているように感じました。

時代劇の「オワコン化」とその背景
現在、日本国内では時代劇の新作があまり制作されていないと言われています。しかし、テレビ朝日の社長は定例会見で「時代劇は非常に大事なコンテンツのひとつ」と発言し、確かに「必殺仕事人」や「暴れん坊将軍」などの再放送が続いていることからも、時代劇に対する一定のニーズがあることは明らかです。

ただし、現実問題として、時代劇を新たに制作するのは非常に難しい状況にあります。最大の理由は「制作コストの高さ」。時代劇では出演者全員にカツラや衣装を用意する必要があり、さらに専門の結髪師や着付け担当者が大量に必要です。これだけでも現代劇よりも大幅な予算がかかるのです。

制作時間と環境の制約
時代劇の撮影には、現代劇の倍以上の時間がかかることもまた問題です。時間が長ければ、それに比例してコストも増えていきます。また、ロケ地の選定も難航します。たとえば、城の天守閣を背景に撮影したい場合、地面が舗装されているため、撮影できるアングルが制限されることが多々あります。

さらに、外で撮影していると、トラックが通ったり、飛行機の音が入り込んだりするなど、スムーズな進行が難しい場面も少なくありません。最新技術を使ってこれらの問題を解決することも可能ですが、当然その分の追加費用が発生します。

時代考証の欠如と人材不足
時代劇には、正確な時代考証が欠かせませんが、実は「時代考証のプロ」が少なくなっている現状も深刻です。故・松方弘樹さんがかつてセットの不備を指摘し、自ら時代考証を行ったというエピソードは、専門家の減少を象徴しています。時代劇を制作するためには、膨大な知識と経験が必要ですが、それを支える人材の育成も追いついていないのです。

「SHOGUN」の成功が示す可能性
このような困難な状況の中で、「SHOGUN」の成功は、日本の時代劇制作に新たな希望をもたらすかもしれません。日本国内では低予算での制作が主流ですが、海外マーケットを視野に入れれば、さらなる資金や技術を導入する可能性があります。今回の「SHOGUN」の成功が、そのきっかけとなり得るでしょう。

時代劇は、日本の伝統と文化を世界に広める貴重なコンテンツです。制作コストや時間の問題はありますが、世界市場を見据えた新しい展開があれば、再び時代劇が復活する日が来るかもしれません。